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【映画の感想】『バグダッド・カフェ』 映画史に残る1987年の名作映画、出会いできっと人生は変わる

公開日: : 最終更新日:2014/06/06 映画 ,

 

砂漠に佇むさびれたカフェ

うまくいかない人生に、優しい出会いを

 

バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版 Blu-ray

映画2作目はこちら、「バグダッド・カフェ」(原題:Out of Rosenheim、英題:Bagdad Café)。

世間一般でもかなり有名なタイタニックの次に紹介すべき作品を考えたら、これでした。

映画を少しでも齧っている人なら誰でも知っている、超有名作ですが、一般的な知名度はそれほど高くないでしょう。というのも、1987年の映画と若干古めで、かつ、映画と聞いて人々が想像するような内容ではないからです。

あらすじは後に紹介しますが、人の出会いと交流を描いた映画です。

映画にあまり触れたことのない人にこそ是非観て頂きたく、激しいドンパチや美男美女のラブストーリー、人が死んで感動させる映画だけが映画じゃないんだ、ということを知って頂けたらと思います。

砂漠のカフェを訪れたひとりの女性

あらすじ

アメリカ旅行中に夫と喧嘩したドイツ女性が、大きなトランク一つで砂漠の道に降りてしまう。一人で歩く彼女がたどり着いた先は、ロサンゼルスからラスベガスへと向かう砂漠に佇む、さびれたカフェ。
ガソリンスタンドとモーテルを兼ねているその「バグダッド・カフェ」には、不機嫌な女主人や、その家族、モーテルに泊まる個性的な住人など、変人ばかり

異国の地で他に行くあてもない、かといって特にやることもない彼女は、まじめできれい好きな性格もあって、勝手に建物の隅々まで掃除したり、カフェを手伝ったりと、おせっかいとも呼べる勢いでカフェを取り巻く人々と交流しはじる。
そして、皆に彼女が受け入れられるにつれて、けだるい雰囲気だった「バグダッド・カフェ」にも次第に活気がでてきて……

主人公は太った中年女性

ドイツ人旅行客”ヤスミン”を演じるのは女優マリアンネ・ゼーゲブレヒト。

実は彼女、とっても太っています。興行収入を重視して、やたらと有名なタレントを起用する日本の映画ではありえないくらいにふくよかな彼女。そして中年です

しかも、映画の最初からそんな彼女が汗だくで砂漠を歩くシーン。バックでは郷愁を感じさせる美しい歌が流れています(本当に素晴らしいシーンです)。
いわゆる娯楽映画しか観たことのない人からすれば、随分衝撃的な導入でしょう。

しかし彼女、華があるんです
気品の漂う出で立ち。異国の地で表情の固い彼女が、たまに見せる優しい笑顔。汚い部屋を見て、つい勝手に掃除を始めてしまう真面目な性格に、密かにマジックを練習して皆を喜ばせようとするお茶目な面も。
映画を観ているうちに、彼女の素敵な人格がにじみ出ているのが不思議とわかってくるんです。

カフェの人々にたくさんの幸せを届ける彼女。

映画を観終わるころ、きっとあなたもヤスミンのことが好きになっているはずです

映画のみどころ

活気づいていくカフェ

登場人物は皆変人だったり、何かを抱えています。

何をしてもうまくいかないことばかりで、ついつい不機嫌に当たり散らしてしまう女主人。折り合いが悪く突発的に家を出ていってしまうが、妻のことが心配な夫。うるさいからやめろと罵倒されながらもピアニストを夢見る少年。読み書きができないが誠実な青年。母親と喧嘩しては男と遊んでばっかりの娘。老いてなお人生を楽しむカウボーイ風の老画家。妖艶で寡黙な刺青入れの女性。ブーメランを投げてばかりの旅の青年。そして行きずりのトラックの運転手たち。

なにかが噛み合わない彼らを、どう彼女が幸せにしていくのか

どんどん活気づいていくカフェ。観ているこっちも幸せな気持ちにになります。

女性の友情とマジックショー

女主人の”ブレンダ”は始め、ヤスミンのことを露骨に怪しみます。わけのわからない名前の、英語の下手な外国人がこんな汚いモーテルになんの目的があって連泊するんだ、と。終いには、不審者として馴染みの保安官に連絡したり、ライフル銃を振りかざして出て行けと罵倒したりと大変ご立腹です。

手の付けられないような彼女の抱える問題も、やっぱりヤスミンが優しく包み込んであげます。
そして彼女らは親友に。人生に迷った女性の固い友情がラストにかけて丁寧に描かれます。

ラストシーンでは唐突にミュージカル仕立てのマジックショーが始まります。
幸せそうにショーをする面々と大熱狂の観客。あんなに暗かったカフェが、皆の集まる場所になるという大団円のラスト。このカタルシスはなかなか味わえません。

美しい主題歌

主題歌はジェヴェッタ・スティールの歌う「Calling You」。

悲しげでどこか懐かしい曲調に美しいメロディが乗った名曲。映画は観たことないけど、この曲は知っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、「バグダット・カフェ」のために書かれた曲で、その歌詞を見てみると、ドンピシャで映画の内容と一致しています。壊れたコーヒーマシン、ヴェガスへ続く道にあるカフェ……
映画を観終わったら、是非歌詞を見ながら「Calling You」を聴いてください。

筆者は、ヤスミンがこの曲をバックに砂漠を歩く最初のシーンを観て、その美しさに鳥肌が立ちました。
この映画がどう展開するんだろうとワクワクしたのを覚えています。
確実にこの曲が映画の良さを引き立てています。

どうやら、本作品でアカデミー賞最優秀主題歌賞にノミネートされ、これまで80組以上のアーティストにカバーされているらしいです。様々なカバーを聴き比べてみるのも面白いかもしれません。

余談

2011年にテレビで放送していました深夜アニメに、老舗温泉旅館で働くことになった少女の成長を描く「花咲くいろは」という作品があります。

劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME (Blu-ray Disc初回生産限定特別版)

実は、その16話「あの空、この空」のとあるシーンでは、旅館の若旦那の部屋に「バグダッド・カフェ」のポスターが貼ってあるのがチラッと見えるんです。
若旦那は大学時代は映画研究会に所属しており、旅館の息子でなければ映画監督になっていたというほどの映画好き。そして、ポスターの見えるシーンというのが、若旦那が昔(幼いころや映研時代)を思い出して、優秀で美しい姉へのコンプレックスを持つことになった、自分のアイデンティティについて独白するというもの。

作中でポスターに関する言及はありませんので、ポスターのデザインを知っていれば「バグダッド・カフェ」が若旦那にとって大切な映画だったことがわかる、という憎い演出です。

いろんな作品を知っているとこういった遊び心に気付けてとても面白いですよね。

ちなみに、部屋にはもう一枚、ポスターが貼ってあり、そちらは「ミツバチのささやき」という映画。どうやら制作スタッフが映画好きだったらしいです。
是非確認してみてください。

「花咲くいろは」と「ミツバチのささやき」についても、いつか記事を書こうと思います。

ミツバチのささやき [DVD] バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版 Blu-ray

 

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