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【映画の感想】今更ながら『ブレードランナー ファイナル・カット』を観てみた

 SFの古典とも言える名作映画

 

機械と人間の境界はどこに?

 

ブレードランナー ファイナル・カット [DVD]

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「ブレードランナー」といえば言わずと知れたSF映画の名作ですが、恥ずかしながらそれまで観たことがなかったんですよね。

筆者は決して超映画マニアというわけではなく、いろんなメディアの作品を虫食い的に楽しんでいるので、案外こういう名作中の名作も観てなかったりします。という拙い言い訳を挟みつつも、正直なところは、最近「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス」を観てからなんとなくSFの名作映画でも観るかという気持ちになった次第です。

筆者はそのとき初めて知ったんですけど、実はブレードランナーってなんと5つもバージョンがあるんですよ。エンディングが違ったりエピローグが追加されている映画はたまにありますけど、5つもあるのか!と驚愕してしまいました。

いくらか考えてから、全部見るのは大変だから1個でいいか、と調べていくうちに結局この「ブレードランナー ファイナル・カット」に落ち着いたわけです。

ちなみにバージョンは以下の5つ。

  1. ワークプリント版「ブレードランナー」(1982)
  2. オリジナル劇場版 「ブレードランナー」(1982)
  3. インターナショナル劇場版 「ブレードランナー 完全版」(1982)
  4. 「ディレクターズカット/ブレードランナー最終版」(1992)
  5. 「ブレードランナー ファイナル・カット」(2007)

 

初見ではなんじゃこりゃ!って感じです。完全版やら最終版やら難しい。

まあ簡単にまとめますと

1のワークプリント版は公開前の試写的なお試しバージョン。2のオリジナル劇場版はその後アメリカで実際に公開されたバージョン。3の完全版はさらに日本やヨーロッパで公開されたバージョン。4の最終版は公開10周年記念に再編集されたバージョン。5のファイナル・カットは公開25周年記念にまたまた再編集されたバージョンです。

ここまで細かくバージョンが分かれてるとは、その根強い人気がうかがえますね。

さて、じゃあなんで筆者はファイナル・カット選んだのか、という話に移ります。

5つのバージョンは大きく分けると、監督の意向通りの1,4,5のバージョンと、監督の意向とは異なりナレーションによる状況説明が入った2,3のバージョンに、二分できるそうなんです。それに加えて追加シーンやらなんやら細かな違いはあるそうですが、どうせだったら監督の表現したかったバージョンにしようかなと思いました。さらに一番新しいバージョンということもあり、高画質処理がされているということで5の「ブレードランナー ファイナル・カット」にしたわけです。

ちなみに、筆者が観たのはこの「ブレードランナー ファイナル・カット (2枚組) [Blu-ray]」ですけど、こちらの「ブレードランナー クロニクル [Blu-ray]」では2,3,4の3つのバージョンが観れるみたいです。

 

本題に入りますと簡単な感想は以下の通りです。

  • 名作SFという呼称に納得
  • 謎の多い世界にぐいぐい引き込まれていく
  • 光と影の映像が儚く美しい
  • 本当に人間に近い機械があったらどうなるんだろう
  • 圧倒的なアジア的雑踏感
  • レプリカントの危うい凶暴性が怖い
  • 面白いというより、なんだこれっていう余韻
  • デッカードブラスターかっけえ

 

それでは細かい感想です。

サイエンスフィクションとは何か

世間一般的に「サイエンスフィクション(SF)」と聞いたとき、皆さんはどんなイメージを浮かべるでしょうか?

乱立する超高層ビル?それともアジア的雑踏に行き交うおかしな言語を話す人々?もしくは機械や人工知能に管理された、ある種社会主義的な社会でしょうか。もしかすると、火星に移住した人類の話かもしれません。そこはディストピアなのかユートピアなのか?様々な想像してみるとなかなか面白いです。

でもきっと多くの人のイメージは、大雑把に「サイバーパンク的なイメージ」にまとめられるんじゃないかと思います

そんな既成概念として存在する「サイバーパンク的なイメージ」の形成に一役買っているのがこの「ブレードランナー」、然り、原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」です。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

この作品が発表された後のSF作品群はすべて「ブレードランナー」や「電気羊」に影響を受けているといっても過言ではないくらいの超名作らしいです。筆者はSFという一大ジャンルの発展をこの眼で見てこの肌で感じてきたわけではありませんが、いざ映画を見てその表現にも納得、といったところでした。

なんて言うんですかね、圧倒的な存在感というか。

言葉にできない、独特の雰囲気があるんですよね

確かに古い作品ということもあり、やけに長い間のとり方など気になる部分はありますが、作品全体を考えると、もはやそれらも一つの味となって必要のない要素やセリフやシーンは一切ないような気持ちにさせられます。そんな不思議な説得力がある映画だなと思いました。

確かに、作家さんや監督などクリエイターの方々は一度見たら影響を受けずにはいられないでしょうね

納得です。

ちなみに筆者は「サイエンスフィクション(SF)」と聞くとまず、ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」や「神秘の島」などの創世期のSFが思い浮かぶんで、一般とはイメージが若干ずれてるかもしれません。小さい頃に好きだったんですよね、ジュール・ヴェルヌ。今でも少年の頃のあのわくわくを思い出す時があります。ある程度成長するとどんな作品に触れても、あの頃のような本当に純粋な楽しみ方ができなくなっているような気がして時折寂しく思うことがありますね。

海底二万里(ジュール・ヴェルヌ・コレクション) (集英社文庫) 神秘の島〈第1部〉 (偕成社文庫)

海底二万里(ジュール・ヴェルヌ・コレクション) (集英社文庫)

神秘の島〈第1部〉 (偕成社文庫)

 

あらすじと謎

極度に発達した遺伝子工学により「レプリカント」と呼ばれる人間そっくりの人造人間が開発され、過酷な環境での労働に従事している世界。レプリカントは外見こそ人間そっくりなものの、感情を持たないため思考回路は大きく異なっている。しかし製造後に何年か経つとレプリカントにも感情が芽生え、脱走するものが現れた。主人公デッカードは、人間社会に紛れて暮らすそんなレプリカント達を排除する通称”ブレードランナー”の一員として、脱走した6体のレプリカントを処刑しに向かう……。

あらすじだけ見ると、ハードボイルドでわかりやすいアクション物みたいですね。

実際は、もっと退廃的で抽象的な複雑な作品です。

主人公デッカードが寡黙な人間だったり、わざとらしい世界設定の説明は全くと言っていいほどないため、良く言えば視聴側の想像の余地が大きい、悪く言えば説明不足な映画です。

でも良いですよね、こういう作品。観てる側があれこれ想像して議論したり考察する余地がある作品ってとても楽しいと思います。惜しむらくは自分が「ブレードランナー」が発表された当時まだ生まれていないことですが。

どこかで聞いた話なんですが、最近はこういう想像の余地を残す作品ってだんだん少なくなっていて、最終的に製作者側の答えをすべて聞きたい視聴者が多いんですって。NHKのドキュメンタリーでも昔は賛成意見と反対意見の両方を映してからあなたはどう思いますか?でしめくくる構成が多かったけど、近年はある一定の立場から物事見つめてあらかじめ番組側の結論を述べるものが増えているらしいです。ほんとかどうかは知りませんが、確かに少なくなっているような気がしなくもないですよね。インターネットの発達により、人々が即物的な答えを求めるようになった結果でしょうか。僕にはわかりません。

なんにせよ、謎が多いですねこの映画。

より深くこの「ブレードランナー」の世界を知りたいと思いました。世界の歴史もそうだし、レプリカントを製造しているタイレル社の概要や、意味深に折り紙を折る警察官の背景など、好奇心が刺激されました。

どこかに設定資料集とかないのかな?

引き込まれる映像

ホント映像がすごいです。

とにかくカッコいいんですよね。光と影の使い方というか、終始暗い世界にたまに光が映るとそれがすごく綺麗で、退廃的な世界に差し込む希望のようなものを感じさせます

アジア的雑踏ってのもいいですね。英語の他にもよくわかんない言葉や日本語が聞こえてきたりします。日本人からするとちょっと笑ってしまうような場違いなセリフもあるんですが、それもそれで楽しい。特に冒頭のデッカードと飯屋の日本人店主との一幕が良いです。なんだかよくわらないけどあそこで一気に映画の世界に引き込まれました。

機械でできたフクロウや蛇。言葉で操作する機械。エスニックショーパブ。品番を鑑定してくれる婆。空飛ぶパトカー。薄汚れた路地。降りやまない雨。そしてなによりデッカードブラスター

ブロマイド写真【ノーブランド品】★ハリソン・・フォード/『ブレードランナー』/デッカードブラスターを持つ横顔

ブロマイド写真【ノーブランド品】★ハリソン・・フォード/『ブレードランナー』/デッカードブラスターを持つ横顔

やはり、サイバーパンクと近未来ガジェットは切っても切り離せない関係にあります。

30年以上前にここまでの世界を想像して映像化した監督リドリー・スコットをはじめとする制作陣に敬意を示したいです。

機械と人間の境界

機械って言ったら、油を差して電気で動くあれでしょあれ。人間とは程遠いよね。

なんて言ってる人も、人間と同じ有機物でできていて人間そっくりで感情も持っていて、食事もして普通に会話している機械を見たらどう思うんでしょう。人が創り出したものはあくまで機械だと割り切れるもんなんですかね

今となってはすごくありふれた、一周回って逆に珍しいともいえる、そんな古典的テーマが主題です。

この映画は設定上、2019年ということになっています

昔の人が想像したのとはいささか別の方向に科学技術は発達していて、アンドロイドはともかく人工知能はまだまだ開発途上です。いつかこの映画と同じように人間と機械の境界が曖昧になったとき、人間はどういった結論を下すのでしょうか。倫理上の観点から法律によりアンドロイドを規制するのか?それとも共存していくのか?気になりますね。

まるで人間のようなレプリカントを愛するデッカード。

生物特有と言われている「愛」を機械が手に入れたとき、世界はどう変わるのか。

この眼で見たいものです。

レプリカント

レプリカントの危うさを秘めた凶暴性が怖いです。

感情が芽生えているといってもまだまだ未完成で謂わば3歳児のようなもの。それでいて人間より強い力や高い知能をもっているわけですから、もう手に負えません。あんなんいたら怖すぎです

そんな相手に追いつめられて逃げながらも必死に戦うデッカードはカッコいい。

そして印象的なのがレプリカントの独白

生きる目的。死への恐怖。視聴者に直接訴えかけてくるその言葉は、どこか不安定で危うい、でもすっと心に入ってきて思っている以上に感情移入してしまいます。

これはもう人間だ。と前のシーンまで恐怖の対象でしかなかったレプリカントが急に可哀想に思えてきます。これはもうホント素晴らしい。しかもこれが最後のレプリカント役のルトガー・ハウアーの発案だというのだから驚きです。

俳優つながりで言えば若かりしハリソン・フォードもいいですね。

寡黙ながらも感情的な演技です。

最後に

観てない人は観てくださいとしか言えません。

この雰囲気は実際に感じて頂きたいです。最後に言うことではないかもしれませんが、筆者なんかの拙い言葉で変な印象を抱く前にまずは一見してほしいというのが正直な気持ちです。

うーん、やっぱり古典と言われる作品にはそれなりの理由があるんだな、と改めて実感しました

さらに言えば自分の無知っぷりを恥じました。

これを機にまだ観ていない名作映画観てみようかなと思った次第です。

そういえば高層ビルに大きく映るの強力わかもとの広告は一体なんだったんだろう。

強力わかもと 1000錠強力わかもと 1000錠

ブレードランナー
Blade Runner
監督 リドリー・スコット
脚本 ハンプトン・ファンチャー
デイヴィッド・ピープルズ
原作 フィリップ・K・ディック
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
製作 マイケル・ディーリー
製作総指揮 ブライアン・ケリー
ハンプトン・ファンチャー
出演者 ハリソン・フォード
ルトガー・ハウアー
ショーン・ヤング
音楽 ヴァンゲリス
撮影 ジョーダン・クローネンウェス
編集 テリー・ローリングス
製作会社 The Ladd Company
配給 ワーナー・ブラザーズ
公開 アメリカ合衆国の旗 1982年6月25日
日本公開 1982年7月3日
上映時間 117分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $28,000,000
興行収入 $32,868,943 (アメリカ・カナダ)

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