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【映画の感想】 『ディパーテッド』 豪華俳優陣による良リメイク?それとも……

2転3転する展開に息もつかせぬ駆け引き

 

長い戦いの果てに得るものは、、、

 

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今回は2006年公開の「ディパーテッド」の感想です。

最近アメリカ人の友人と映画の話をしていたら、どの俳優が好きなんだ?と訊かれて、悩んだ挙句に一番好きなのはレオナルド・ディカプリオだと答えました
すると案外食付きがよくて、「シャッターアイランド」と「ディパーテッド」は俺のお気に入りなんだ!とか熱く語ってくれたんですが、実は筆者「ディパーテッド」は公開当時に観てからというもの、思い出すことすらしていなかったものですから、ちゃんと覚えてなかったんですよね。そしたら彼に、よくそんなんでレオナルドが好きって言えたね!と嘲笑される始末

この哀しい事件をきっかけに、筆者はレオナルド・ディカプリオ出演作を端から観直し、そのすべてを記事にすると決意した次第です。「タイタニック」は既に記事にしてありますからこれで2作目です。まだまだ先は長い。

「タイタニック」の記事はこちら

そういうわけで8年ぶりに観てみました。

正直な感想として

  • ああ、昔はちゃんと理解できてなかったな
  • 演技はいいけどその脚本はどうなの?
  • 確かに面白いっちゃ面白いけどいろいろと細かいところが気になる
  • アイリッシュ感しつこくてお腹いっぱい
  • ホントにアカデミー賞受賞してんのかよ……
  • リメイク元にちょっと失礼な改変じゃないですかね
  • でも、やっぱりカッコイイわ、ディカプリオ

といったところです。

 

どんな映画?

2002年から2003年にかけて3作が公開された大ヒット香港映画「インファナル・アフェア」のリメイク作。

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出演俳優にはレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォールバーグ、マーティン・シーン、アレック・ボールドウィン、とさながら、ぼくがかんがえたさいきょうの映画、と言わんばかりの布陣。

「無冠の帝王」を呼ばれていた監督マーティン・スコセッシは本作で遂に第79回アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・編集賞の4部門を受賞しました。

ディカプリオとスコセッシの共演は2014年現在で次の5作になり、本作はその3作目に当たります。

「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002年)
「アビエイター」(2004年)
ディパーテッド」(2006年)
「シャッター アイランド」(2009年)
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)

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リメイク元の「インファナル・アフェア」同様、警察とマフィアの両方に互いのスパイが潜入する形となり、両者の駆け引きが描かれますが、組織の設定や結末などは大きく異なります。

この映画はまあ間違いないだろうと、製作陣を見れば誰もが思います。さらにはアカデミー賞まで獲ってるわけですからね。

ところが本作、実はあまりよくないリメイクの例として度々挙げられています

そのワケは何なのか、述べていきましょう。

 

あらすじ

舞台は、マサチューセッツ州ボストン南部。「サウシー」と呼ばれるその一帯は、治安が著しく悪い。

蔓延する犯罪を撲滅するために、州警察はビリー(レオナルド・ディカプリオ)を街を牛耳る犯罪組織に潜入させる。

その一方で、犯罪組織のトップであるコステロ(ジャック・ニコルソン)も、幼い頃に面倒を見たサリバン(マット・デイモン)を州警察にスパイとして送り込んでいた。

互いの組織で暗躍する二人。様々な人間の思惑が絡み合い、命を賭けた情報戦は加速していく……

 

豪華俳優陣の名演技

先に良い点を挙げておきましょうか。

繰り広げられる熾烈な演技合戦は、さすが豪華俳優陣といったところでしょう。脚本の意味を理解してそれぞれが渾身の演技を披露しています。

特に、犯罪組織トップのジャック・ニコルソンの怪演。仲間であろうと殺人も厭わない残虐性を持ち、狡猾で頭も回るが、時に合理的でない選択をも進んで行うような突飛さを兼ね備えた超危険人物。持論を語り相手を試すような話し方を好み、ただの日常会話でさえもどこで機嫌を損ねるかわからない恐ろしさがあります。

ええ、全くお近づきになりたくないような方です

だって普通にご飯食べながら、死体から切り取った手首を弄んだりするんですよ。そりゃもうドン引きですよ。

彼は実在する人物、ジェームズ・ジョセフ・バルジャーが元になってます。ボストンの暗黒街のトップ、数々の犯罪に手を染めた凶悪犯罪者です。ボストン市民のインタビュー映像を見たんですが、ジャック・ニコルソンの演技や人物像は、ジェームズ・バルジャーのそれにかなり近いとかなんとか言ってました。あれがそのまま現実にいたらやばすぎるだろう。まあそれがホントかどうかはわかりませんが、演技はやっぱすごいです。完全に頭のおかしい人です。

主演の二人もさすがといったところ。適度な没個性感とどんな役でもソツなくこなせる器用さで、二つの顔を使い分ける知的さも、憔悴してゆく神経もしっかりと演じきれてます。

脇役で個人的に良かったのは、ディカプリオの上司うち一人を演じている、マーク・ウォールバーグ。肩肘張らない自然な感じが、他の人達の濃い演技に上手い具合に馴染んでました。

彼が警官役というのは皮肉ですね。どちらかといえばボストンのアイリッシュマフィアのような実人生を歩んでいたような……

「トランスフォーマー/ロストエイジ」(記事はこちら)で主役に抜擢されたのが記憶に新しいからかもしれませんが印象に残りました。

とにかく演技は良いです。演技は

 

ボストン暗黒街の実態とアイリッシュ差別

本作でしつこく描写されるのが、ボストンという街の荒んだ雰囲気とアイルランド人差別。

作中の「ボストンのアイリッシュは警官かマフィアになるしかない」という言葉からわかるように、アイリッシュは選択できる職業が少なかったのでしょう。

爛れた生活から抜け出したくて警官になったはずのビリーはマフィアとして死と隣り合わせの生活を強いられ、マフィアから警察に潜り込んだサリバンは社会的地位と名声を手にし知性溢れる彼女も作ります。真逆の人生を歩むことになった二人は、任務と理性、理想と現実の狭間で葛藤します。

同じ街で生まれ育った二人に降りかかる残酷な運命。これはとある局所的な地域特有の問題を描いた、アイリッシュの物語なのです。

コステロの「マフィアも警官も銃を向けられれば何も変わらない」という発言も、根本は同じはずのマフィアと警官の間にある社会的地位の圧倒的な差を、より一層際立たせるための材料に過ぎません。

そのアイリッシュぶりを皆に口々に褒め称えられる、ビリーの叔父や亡き父。ボストンのアイリッシュたちの共同体意識や誇りがうまく表現されています。

共同体意識が強くて、プライドが高く、血気盛んで、酒好き。

執拗に繰り返され刷り込まれるアイリッシュのイメージ。アイルランド系俳優たちによるアイリッシュの物語

まあだから何?って感じなんですけどね

 

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社会派か?娯楽映画か?

正直に言いますと、中途半端です

「インファナル・アフェア」のユニークな設定を借りてきて、局所的な社会問題を付け加えただけ。オリジナリティを出したかったのかもしれませんが、娯楽作品としても社会派映画としても出来の良くない中途半端な仕上がりになっていると思いました。

散りばめられたアイリッシュ要素は物語を飾るエッセンスでしかなく、そこに深い意味やメッセージは感じられません。マフィアの実態だって、実際の人物、事件を元にしてリアリティを売りにしているにもかかわらず、ご都合主義的な展開に娯楽作品よりの演出が多用されます。

スコセッシは本当にこの社会問題を浮き彫りにしたかったのだろうか?と疑問を持たずにはいられません。

無駄に豪華な俳優たちによる息もつかせぬ情報戦を期待しリメイクを楽しみにしていた視聴者の多くは、なんかコレジャナイ感に包まれたはずです。よくわからないローカルな葛藤が延々と描かれるわけですからね。

アカデミー作品賞を受賞しているというのもタチが悪い。こんなの観る前からめちゃめちゃ期待しちゃうじゃないですか。どんなにすごいリメイクなのかと。まあ期待が大きすぎるだけで、作品自体はつまらないというわけではありません。むしろ下手な映画よりは面白いです。それでもアカデミー賞を受賞するほどではない、佳作といったところでしょう。「無冠の帝王」への努力賞くらいに思って観た方が楽しめるかもしれません。

「緻密な脚本」をうたう割にはやや展開が冗長で、娯楽作品にもなりきれないもどかしさを感じます。

決定的なのはその結末ですが、過度なネタバレになりますので記述いたしません。

 

インファナル・アフェアとの相違点

細かいご指摘は他のブログ様にいくらでもあると思いますので、筆者が気になった一点だけを。

ボストンはスタイリッシュじゃない!

舞台がボストンの街に変更されたせいで、原作の高層ビルを舞台にしたシーンでのスタイリッシュさがどうにも足りないんですよね。泥臭い刑事ものというかなんというか。高度な心理戦を彩る舞台は、なるだけ高度な文明を感じさせる背景がいいと思うんです。ある人物が亡くなるシーンも6階建てのただの廃ビルですし。廃ビルだったら屋上に呼び出す必要はないんじゃないですかね?

そこがちょっとチープだったかなと。

 

全体として

面白い香港映画があるからリメイクしよう ← わかる
どうせリメイクするんだったらオリジナリティもださなきゃね ← わかる
俳優はばっちり豪華に決めちゃおう ← わかる
犯罪組織は実際のマフィアを参考にリアリティを出そう ← まあわかる
ついでにボストンのアイリッシュ問題を主軸にしよう ← うーん
結末は皆に救いを与えるため○○○にしよう ← え!?

最後まで観てやっと死者を意味する「ディパーテッド」という題名にした理由が分かりました。これは仏教的観念とキリスト教的観念の違いですね。

せっかくのいい設定がいろいろ詰め込みすぎて残念な形にまとまったという印象。

確かに面白いには面白いというところが逆に中途半端です。娯楽作品として制作したらもっと面白いものに仕上がったのではないかと思います。なんだかリメイク元の趣向を汲み取らず、土足で踏み荒らすようなイメージを受けました。もう少し原作をリスペクトしても良かったのでは?

まあなんだかんだ言って観て損はしないと思います。過度な期待は禁物ですが。

それにしてもディカプリオはホントにかっこいい

役柄も相まって終始ディカプリオを応援してました。マット・デイモンお前だけは許さん!と憎しみをたぎらせていたら、あんなことになっちゃうんですもんね。うーん、残念。アメリカ人的にはあの結末でクール!最高だね!ってなるのかな。

なんにせよ、いい演技してました。

2作目クリアです。

 

 

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