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【本の感想】『十角館の殺人』 綾辻行人の鮮烈なデビュー作!たった1行が世界を覆す、新本格ミステリー

公開日: : 最終更新日:2014/06/06 , ,

 

ミス研合宿の孤島で連続殺人

「探偵」は誰? 「犯人」はだれ?

 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

本の感想、第一弾はこちら。

前回のタイタニックときて、それに負けないインパクトのある作品はなんだろうと考えたとき、真っ先に思いついたのがこの本でした。

当ブログは完全ネタバレなしですので、どこまで面白さを伝えられるか……頑張ります。

(以下敬称略)

綾辻行人の鮮烈なデビュー作

1987年、綾辻行人は「十角館の殺人」で鮮烈なデビューを果たしました。

作家に限らずともあらゆる創造者にとって、デビュー作とはその後の人生に大きな影響を与えるものでしょう。
デビュー作が話題となり、順調にキャリアを積んでいくことは、誰もが一度は考えるであろう夢ですが、口で言うほど簡単ではありません。

話題作りのため、期待の新人作家の処女作には、賞が与えられたり、宣伝が大々的に行われることもあります。
“最初の作品” とはそれほど重要です。

「十角館の殺人」はもはや理想系と言うべき美しいデビューでした。

作家としての知名度や評価はもちろん確立されましたが、同時に『新本格ムーブメント』と呼ばれる一大ブームを巻き起したのです。
この作品を発端として法月綸太郎、歌野晶午、有栖川有栖、我孫子武丸、森博嗣とミステリー作家が続々とデビューし始め (もちろん出版社の後押しもあって)、国内のミステリー小説の人気が高まっていきました。

ブームを起こすほどの影響力を持った作品、それが「十角館の殺人」です。

作品の紹介

「クローズド・サークル」の孤島

とある大学の推理小説研究会のメンバー7人が、合宿のため孤島を訪れる。

地元の人間はあまり近づかないという、無人の孤島に好奇心をギラつかせる彼らには理由があった。

半年前に、自ら建てた館に住む有名な建築家とその妻や使用人たちが殺され行方不明になるという、凄惨な事件がおきていた、“いわくつき”の島

1週間の滞在を計画する彼ら、そこには悪意が潜んでいて……

王道の孤島ミステリーです!

助けの呼べない状況で、一人また一人と減っていくメンバー。
誰が何のためにどうやって?

読者は8人目の滞在者として、十角館の恐怖を体験することになります。

「サスペンス」の本島

舞台は孤島だけではありません。孤島で起こる惨劇と並行して、本島でも話が進んでいきます。

推理小説研究会の元会員のもとに、とある手紙が届く。手紙の差出人には既に亡くなっているはずの有名な建築家の名前が。
手紙に書かれていた女性の名前も、彼の知っている人物だった。
その建築家の館で合宿をしていると知った彼は、友人と共に過去の事件について調べ始める……

本島での物語は、自分の足で調査し、真実を掴んでいくというサスペンス仕立てになっています。

孤島と本島で交互に進展する物語

関わりあう二つの謎から目が離せません。

推理小説研究会メンバーの名前

孤島にいる7人。彼らは研究会の謂わば幹部たちで、それぞれに著名な推理小説家の名前がつけられています。

  • エドガー・アラン・ポー
  • ジョン・ディクスン・カー
  • エラリー・クイーン
  • S・S・ヴァン・ダイン
  • アガサ・クリスティ
  • バロネス・オルツィ
  • ガストン・ルルー

実にそうそうたる面々。ミステリーファンなら卒倒してしまうような集まりです。

お互いを本名ではなく、「ポウ」「エラリイ」などとニックネームで呼び合う彼ら。

誰が犯人で、誰が探偵か?

古典ミステリー好きの筆者は、次は誰が出でくるのだろうと、もう始まりの人物紹介でワクワクが止まりませんでした。
ニックネームと人格にはそれほど関係がないので、古典ミステリー?なんぞや?という方でももちろん楽しめます。
知らないという方は、読後に彼らの著作に挑戦してみるのも面白いでしょう。

本島で過去の事件の調査に当たる二人にも同様にニックネームがあります。

そちらの方は、誰だろう?と予想しながら読んでいただけると、より一層楽しめると思います。

エドガー・アラン・ポー短編集 アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 103-3) Xの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

1行が世界を覆す

「十角館の殺人」では、ある一行のためにストーリーが積み重ねられていきます。
その1行に到達したとき、きっと驚くでしょう。

『叙述トリック』を用いている作品では、”叙述トリックがありますよ”と先に言われると妙に身構えてしまい驚けないことも多々あるのです。そのため友人 (特にミステリー慣れしている人物) にお勧めの小説を紹介するときには、どこまで言うべきか非常に悩みます。

この小説の場合、そんなのは杞憂です

ミステリー慣れしている方でもきっと驚かれると思います。
事実、私自身がそうでした。
後輩に勧められて読んだのですが、そのころは海外の古典ミステリーを読みあさっており、トリックの解明に関してはちょっとした自負がありました。ところが、恥かしいくらい完璧に騙された私は、以後謙虚な態度を心がけるようになったのです。

是非、ネタバレなどを拝見せずに、みなさん自身の目でその真相を確かめてください

ちなみにヒントと呼べるヒントはほとんどありませんので、純粋に物語を楽しむ気持ちで読まれると良いと思います。

館シリーズの原点

建築家・中村青司の建てた奇妙な建物で起こる殺人事件を扱った「館シリーズ」

「十角館の殺人」で一躍有名作家となった綾辻行人は、もともとシリーズ化するつもりはなかったのだとか。中村青司という名前も、シリーズ化するならもっとちゃんと考えたと述べています。

結果として、圧倒的な人気からシリーズ化が決定するという嬉しい誤算となりましたが。

2014年6月現在、館シリーズは、

  • 十角館
  • 水車館
  • 迷路館
  • 人形館
  • 時計館
  • 黒猫館
  • 暗黒館
  • びっくり館
  • 奇面館

の9作品。

10作目となる次作で完結すると言われており、次作の発表前に読破してみてはいかがでしょうか。

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)時計館の殺人<新装改訂版>(上) (講談社文庫)黒猫館の殺人〈新装改訂版〉 (講談社文庫)暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)びっくり館の殺人 (講談社文庫) 奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

最後に

1987年の小説ですから、携帯電話などございません。

最近の小説だと、文明の発達によって「クローズド・サークル」を作ることが困難になっているため、ミステリー作家にとっては厳しい世の中になったなと筆者は常々感じています。

インターネットの普及で、筆者のように感想を垂れ流す「言いたいことも言える世の中」になったというのも事実ではありますが。

文明の発達に負けず、良質なミステリーを創造してもらいたい。

そんなことを思いました。

 

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